概要

1971年創業の金融情報サービス会社である株式会社QUICK様では、銀行や証券会社の営業担当者が使用する投資信託販売向けの動くカタログ「QUICKファイナンスカタログ(通称:QFC)」をコンセプトモデルとして開発した。QFCはC#とXAMLで開発されており、Windowsタブレットで動作する。アプリの開発に際し、特定のテクノロジーを選択した理由やメリット、開発会社との一風変わった関係と開発手法、開発したシステムのこだわりや、アプリに使用したComponentOne Studioのコントロールについて、株式会社QUICK イノベーション本部 副本部長 兼 パーソナル事業部長 辺見 重明様と、開発を担当した株式会社マーベリック 代表取締役 秋葉 卓也様・取締役 桑村 英樹様にお話を伺った。

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画像「QUICKファイナンスカタログ操作風景」
QUICKファイナンスカタログ操作風景

Windowsネイティブへ突き進むというチャレンジ

株式会社QUICKは日本を代表する金融情報サービス会社であり、金融機関はもちろん事業法人から個人まで、多岐にわたってサービスを提供する。サービスのラインナップは多彩で、新しい技術を取り入れたソリューションの開発にも取り組んでいる。今回ご紹介いただいた「QUICKファイナンスカタログ(通称:QFC)」も、“動くカタログ”をコンセプトに最先端技術を取り入れチャレンジしたWindowsタブレット向けのアプリケーションである。iOSやAndroidタブレットではなく、あえてWindowsタブレットを選択した理由は何だったのか。開発のきっかけについて、QUICKの辺見 重明氏はこう話す。

画像「株式会社QUICK 辺見 重明様」
株式会社QUICK
イノベーション本部 副本部長
兼 パーソナル事業部長 辺見 重明 様

「弊社では、デザインと先端技術を駆使して新しいサービスを作ろうとチャレンジしていました。このチャレンジは納期や売上といった明確なノルマがあるわけではなく、要求仕様書もない。まったく0からのスタートだったので、デバイスも決まっていませんでした。」

デバイスの選択肢にはもちろんiOSやAndroidがあり、マルチデバイス対応を考えるのであればWebアプリケーションが適している。しかし辺見氏は、そこを超えるチャレンジを求めていた。

「Webアプリケーションは『マウスをタッチに変えただけ』という印象でした。弊社でも実際にWebアプリとして動いているサービスはいくつもありますし、情報へのアクセス手段として最適なものだと思います。しかし、もう少し違った視点から何かできないかと考えていました。 そんな中、2013年頃にマーベリックさんと出会い、Windows 8.1のストアアプリを紹介してもらいました。ネイティブアプリならではの指に吸い付くような動きや体感速度が、Webアプリとはまったく違うものでした。」(辺見氏)

Windowsタブレットを持っているお客さんは極めて少ないため、特定のテクノロジーに突き進むという選択は想像もしていなかったが、『Webアプリケーションではできない体験』がそこにはあった。この体験が決め手となり、この分野での開発にチャレンジすることにしたという。

開発会社にとっても新しいチャレンジ

開発を担当したのは株式会社マーベリック。XAMLアプリケーションの開発を中心に最先端技術に力を入れ、「IT×デザイン」という独自の開発スタイルで事業を展開している。今回のQUICK社とのプロジェクトについて、どのように取り組んでいったのか。代表取締役 秋葉 卓也氏にお話を伺った。

画像「株式会社マーベリック 秋葉 卓也様」
株式会社マーベリック
代表取締役 秋葉 卓也 様

「最初に辺見さんがお話しされたように、スタート当初は通常のプロジェクトと比べると納期や要件などが明確には決まっておらず、まずはWindowsタブレットやWindowsストアアプリの操作感や体験を共有しましょう、というところからスタートしました。弊社としても、実用できるものをテーマにストアアプリを開発するという経験は多くなかったですし、金融に関しても詳しいわけではないですが、ユーザーの欲求やニーズ、これまでの課題など幅広くヒアリングすることから始めました。お互い手探りの状態だったと思います。」

QUICK社とマーベリック社で、メンバーの入れ替わりはあったものの8名ほどのチームを組み、週1回のペースでディスカッションを重ねた。QUICK 辺見氏と、マーベリック 秋葉氏は、お互いの印象についてこう話す。

「マーベリックさんは、雑談ベースでもデザインやアイデアを出してくれました。議論が収束せず持ち帰っても、翌週には解釈して提案を持ってきてくれる。それをベースに新しい議論が生まれる。その繰り返しでした。金融業界の視点ではなく、第三者の視点からさまざまな角度で提案があり、発想が斬新で、新鮮でした。」(辺見氏)

「『雑談していると提案が出てくる』というのは最高の誉め言葉ですね(笑)辺見さんからは『要件定義書を書いて』とか『設計書を出して』というような、従来の“型にはまった”要求はされませんでした。お互い共通していた思いは“良いものを作りたい、そのためには従来の手法が適切なわけではない”ということ。これは辺見さんを始めとしたQUICKさんの理解があったからこそできたのだと感じます。また、QUICKさんの大きな特長は、議論の際に『何でこれが欲しいんだっけ?』と、“欲求に立ち返る”ことを大事にしている点です。この部分は何度も何度も話し合いました。」(秋葉氏)

話が横道に逸れたとしても、“欲求に立ち返る”ことで軌道修正ができる。これを基本ルールとすることで、本当に必要なものは何かということが導き出されるという。
では、開発会社とチームを組み、従来のSIの手法とは違う形でプロジェクトを進めることに、QUICK社に抵抗はなかったのだろうか。

「社内外に関わらず、発注と受託の枠組みのままだと、リスク回避などに重きを置くため自由な発想ができず、似たようなものしか作れなくなります。また、チーム体制を築かず開発会社に丸投げしてしまうと、出てきたものに対して無責任な批評をしたくなりがちですが、同じチームで同じ方向性で進めていけば、それを防ぐことができます。」(辺見氏)

画像「信頼関係のうえ成り立つディスカッション」
信頼関係のうえ成り立つディスカッション

こうして2社が信頼関係を築きチームとなってから1~2カ月経ったころ、マーベリック社はQUICK社の要求に合わせ、最初のモックを提供した。このモックとは、データと繋がっていない“プロトタイプアプリ”のことである。プロトタイプに触れた時の感想について、QUICK 辺見氏は以下のように振り返る。

「初めて触った時は、『指先の延長線上にいる』というような感覚で、『タッチアプリとはまさにこういうものだ』と思いました。これは他のタブレットにはない感覚で、チーム内でも『Windowsのタッチってこういう感覚なんだ』と言い合ったのを覚えています。Windowsアプリならではの、どんどん横に横にと描画していく動きが大きな違いだと感じました。」(辺見氏)

実用的な“プロトタイプ”を手にし、Windowsタブレット向けに開発するアプリケーションのテーマとして、前述した“動くカタログ” 「QUICKファイナンスカタログ(通称:QFC)」が最適だと判断した。こうして、QFCの開発に着手することになったという。

クライアントサイドとサーバーサイドの分離

QFCの開発でも2社がチームとなり、“欲求に立ち返り”ながらディスカッションを重ねていった。プロジェクトの特長について、マーベリック社の取締役 桑村 英樹氏は当時を振り返りながら話してくれた。

「開発にあたり、マーベリックの役割にデータの設計はほとんどありませんでした。そこはQUICKさんにおまかせして、弊社側はただただ必要な情報が正しく届くか、ユーザーが使いやすいか、欲しがられる機能か、触り心地が良いか、というフロントエンドの部分に集中することができました。」(桑村氏)

フロントエンドとバックエンドは切り離す。こうすることで、データの形式やデータを呼び出す仕組みに捕らわれず、枠にはまらない発想でUI構築を行えたという。

「アーキテクチャーとしては、情報にアクセスするAPIはQFCのために新たに作りました。ここは開発の中でどうしてもパワーを使ってしまう部分であるため、金融情報に精通しているQUICK側で対応しました。」(辺見氏)

こうして、クライアントサイドはマーベリック社、サーバーサイドはQUICK社と役割分担し、開発を進めた。β版については3か月、そこから9か月ほどかけて、QFCは完成した。

システムの概要と使用コントロール

QFCは、銀行や証券会社といった金融機関に所属する営業担当者が、投資信託などの金融商品をお客さまに紹介するためのアプリケーション。金融商品(ファンド)が1つ1つパネルに組み込まれ表示される仕様で、すべてリアルタイムのデータと連携している。ファンドは『費用』、『実績』、『リスク』などの項目から比較でき、絞り込み機能やソート機能も備えている。さらに、お客さまが所有しているファンドと比較したり、興味のあるファンドをいくつか選択し、6か月・1年・3年・5年の単位で期間ごとにチャート比較することもできる。
膨大な情報量を表示しなければいけないにも関わらず、画面を1つ切り出すだけでも洗練されたデザインで表現していることが分かる。システムのこだわりについてもお話を伺った。

「金融は、商品が抱えるデータが膨大ですから、ただただ情報を並列に並べていては何一つユーザーに届けることができません。
各場面でユーザーが必要とする情報はどんな粒度、どんなボリュームで、それらがどういった機能としてデザインされていれば使いやすいのか、という試行錯誤を何度も繰り返しました。
最大のポイントは、ユーザー、つまりこのアプリを利用して金融商品を紹介する営業担当者の『トークの流れ』を邪魔せず、且つ適切にフォローするという点です。
そのために、アプリのメインコンテンツとして表現するべき情報、必要に応じていつでも取り出せるようにしておけばいい機能など、表示するデータや各機能の優先順位をつけることにもこだわっています。」(秋葉氏)

このように、マーベリック 秋葉氏は「利用者の流れをデザインできた」という点が大きな成果だったと話す。ComponentOne Studioは、チャートとタイルビューコントロールで、この一部を担うことができた。

画像「チャートの利用例」
チャートの利用例
画像「タイルビューの利用例」
タイルビューの利用例

実際の開発にあたったマーベリック 桑村氏に、ComponentOne Studioのチャートコントロールについて感想を伺った。

「チャートについては、以前スクラッチで作ったこともありますが、相当骨が折れる作業です。今ではもう作ろうという気がしないですね(笑)ComponentOne Studioが無かったらと考えると、作業量は5倍くらい違うと思います。」(桑村氏)

業務アプリケーションをタブレットに…課題は“デバイスの壁”

これまでの話から分かるように、QFCはかなり完成度が高く、QUICK 辺見氏も満足しているという。実際にお客さまに見せても、目をキラキラさせて触り、反応はとても良いのだという。では、今後の課題はどのようなものだろうか。

「金融業界ではWindowsタブレット導入状況がいまひとつなので、活躍する機会がないのが残念です。タブレットを導入していたとしても、リモートにあるデスクトップを参照するだけ、という使い方をしているケースも多くあります。また、Windowsタブレットを導入するためには、社内で使っているWindowsのバージョンもすべて見直さなければいけない…といったコスト・移行面の問題もあるようです。」(辺見氏)

社内システム整備、コスト、そしてデバイスの壁はあるものの、社内システムでWindowsを利用している企業がほとんどであるため、今後Windowsタブレットを導入する企業が増えることに希望を持っているという。

グレープシティでは、QUICK様・マーベリック様の具体的な開発事例を伺い、これからのWindowsアプリケーションに大きな可能性を感じた。パフォーマンスや保守性、高機能でデザイン性にも幅のあるアプリケーションを実現するためには、長年の実績があるWindowsが優れている。近い将来、業務システムの多くがWindows 10へ移行することが予想され、UWPアプリへの対応が必要になるケースも出てくるだろう。2社の取組みの内容は、ユニークな開発手法をはじめ、お客さまとの関係構築方法など、さまざまな気付きを得る機会となった。

画像「QUICK、マーベリックの皆さま」

●本記事は 2016年10月現在のものです。

株式会社QUICK 様

画像「株式会社QUICK」
所在地 本社
〒103-8317
東京都中央区日本橋室町2丁目1番1号
日本橋三井タワー
設立 1971年10月
会社概要 日本経済新聞社グループの金融情報サービス会社として、世界の証券・金融情報をはじめ、政治・経済情報をリアルタイムで配信。資産運用支援、注文執行業務の支援、情報ネットワーク構築支援サービスなど、証券・金融市場に関連する総合的なソリューションを提供している。
URL http://www.quick.co.jp/

株式会社マーベリック 様

画像「株式会社マーベリック」
所在地 本社
〒135-0064
東京都江東区青海2-7-4 the SOHO 839
設立 2011年11月
会社概要 業務アプリケーションの受託開発(デザイン・設計・開発)
  • PC向けアプリケーション
  • モバイルアプリケーション(タブレット、スマートフォン)
  • サイネージアプリケーション(Surface Hubなど)
  • キオスク端末向けアプリケーション
URL http://www.m-lic.co.jp/

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